ここのところ、リトグリがらみで著作権違反があり、問い合わせなどもいただいた。

そこで、TwitterやインスタなどSNSやブログに投稿する際に関わってくる著作権と肖像権について述べておきたい。

長くなるので、次の項目ごとに、記事を分ける。

・著作権(財産権)→引用の要件
・著作権(人格権)→RTによる著作人格権(氏名表示権)の侵害(先日の最高裁判例)
・肖像権とパブリシティ権→ピンクレディ事件判例

誹謗中傷などについては、またの機会に。

今回は、著作財産権について

6月27日にリトグリのライブ配信が、ライブストリーミングサービス・Streaming+であった。
このサイトのFAQに、録画など一切を禁止する注意書きが掲載されていた。
このFAQは著作権法第30条と第32条に違反するとして、私からイープラスに連絡したところ、そのサイトの問題の箇所は修正された。
これについての詳細は、別の記事に掲載した。(e+(イープラス)のサイトは著作権法第30条違反してる)
詳しくはそちらを読んでいただくとして、ここでは、私的使用のための録画・録音・複製は合法(著作権法第30条1項)とだけ述べておく。

さて、SNSに投稿する際に問題となるのは、転載なのか引用なのか。
無断転載は違法、引用は合法だ。

京都大学が歌詞を引用した式辞について、JASRAC(日本音楽著作権協会)が、著作権使用料を請求したことがある。JASRACは著作権法第32条の引用も知らないのかと、報道されることとなり恥を晒した。
この件については、私の別のブログ食彩旬感の記事(JASRACが、著作権法 第32条(引用)違反?)を参照して欲しい。

こういう事例もあるように、引用については、JASRACにさえ知られていない。
たまに漫画とかに歌詞を引用してあってJASRACの許諾が掲載されていることがある。
これも、JASRACが請求してるとしたら、JASRACは著作権法第32条違反を犯している可能性が高い。


さて、著作者の許諾無く、SNSやブログなどインターネットに転載すると、
著作権法第23条の公衆送信権を侵害することになる。

一方、著作権法では、著作物が自由に使える例外規定を設けている。第30条~第47条。
この中で、インターネットに投稿する際に頻繁に適用されるのが、第32条の引用の規定だ。
著作権法第32条 公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。
文化庁では、その引用の要件として次の4要件を挙げている。

著作物が自由に使える場合

(注5)引用における注意事項

 他人の著作物を自分の著作物の中に取り込む場合,すなわち引用を行う場合,一般的には,以下の事項に注意しなければなりません。

  • (1)他人の著作物を引用する必然性があること。
  • (2)かぎ括弧をつけるなど,自分の著作物と引用部分とが区別されていること。
  • (3)自分の著作物と引用する著作物との主従関係が明確であること(自分の著作物が主体)。
  • (4)出所の明示がなされていること。(第48条)
    (参照:最判昭和55年3月28日 「パロディー事件」)

事件の概要については、この知的財産権判例ニュースを読んでもらうのがわかりやすいだろう。

この事件では、質的量的な主従関係は要件とされておらず、
著作権法32条1項にいう引用としての利用に当たるか否かの判断においては,他人の著作物を利用する側の利用の目的のほか,その方法や態様,利用される著作物の種類や性質,当該著作物の著作権者に及ぼす影響の有無・程度などが総合考慮されなければならない
とされている。


では、これらの要件を満たすようにツイートするにはどうすれば良いか。

私の過去のツイートから例示したい。



引用したのは、NHKミューズノートのウェブサイトから。
主従関係、引用部分との区別、必然性ともに十分。
番組名をハッシュタグにして明記し、さらに画像の出典をURLで明示している。

また、番組名などのクレジットが画面中にある場合には、文内に書かなくても大丈夫。(後述で注意事項アリ)
例えば、



いずれの画像にも、右下にMステのクレジットが入っている。
このようにクレジットが入っていれば、文中に明示しなくても大丈夫だ。
なお、Twitterの仕様により、このようなクレジットがトリミングされることがある。
これは、著作人格権(氏名表示権)の侵害に当たる。これについては次の記事で。
そういうこともあるので、クレジットが画面中にあっても、RTしたらトリミングされるような場合には、明示しておいた方が良い。
実は、いま紹介したツイートは一連のツイートで、その先頭のツイートには、Mステと明示してある。



Twitterについては、このようにすれば引用の要件を満たす。

注意しなくてはならないのは、インスタグラム。
TwitterはテキストベースのSNSで、基本的にはテキストと画像は一緒に表示される。
ところが、インスタの場合、画像ベースのSNSで、テキストは画像に付随するコメントで、個別の画像をクリックしない限り、基本的には画像だけで表示される。
これが主従関係における先ほどの判例の「総合考慮」に影響する可能性がある。
まだ判例はないが、インスタグラムでは、Twitterと同じつもりで引用したとしても、引用の要件を満たせない可能性がある。気を付けた方が良い。


引用や私的複製など合法な行為までを禁止する注意書きを掲載したサイトがある。
そのようなサイトは、引用を禁じていれば著作権法第32条違反、私的使用を禁じていれば第30条違反となる。

例えば、モデルプレス
スクリーンショット (515)

「弊社著作権コンテンツ(記事・画像)の無断での一部引用・全文引用・流用・複製・転載について固く禁じます。」と書いてある。

モデルプレスによる、引用を禁止する注意書きは著作権法第32条違反、(私的使用を含む)複製を禁止する注意書きは著作権法第30条違反だ。

知らないんだろうね。法的な警告の注意書きを載せる時ぐらい、ちゃんと調べたら?と思うが、その手間さえ惜しいらしい。

あらためて、文化庁に掲載された趣旨を読んで欲しいものだ。


 著作権法では,一定の「例外的」な場合に著作権等を制限して,著作権者等に許諾を得ることなく利用できることを定めています(第30条〜第47条の8)。
 これは,著作物等を利用するときは,いかなる場合であっても,著作物等を利用しようとするたびごとに,著作権者等の許諾を受け,必要であれば使用料を支払わなければならないとすると,文化的所産である著作物等の公正で円滑な利用が妨げられ,かえって文化の発展に寄与することを目的とする著作権制度の趣旨に反することにもなりかねないためです。
 しかし,著作権者等の利益を不当に害さないように,また,著作物等の通常の利用が妨げられることのないよう,その条件は厳密に定められています。

この文化庁の文章にもツッコミを入れておこう。
「その条件は厳密に定められています。」
いやいや、厳密に定められていたら、こんなに係争案件が出ないんだけど。
インターネット時代に対応できてない著作権法だから、その解釈をめぐって訴訟が起きる。




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